インタビュー

2012年10月号掲載

『人生で大切なことはみんなマクドナルドで教わった』刊行記念特集 インタビュー

マクドナルドこそ僕の学校だった

鴨頭嘉人

鴨頭嘉人

対象書籍名:『人生で大切なことはみんなマクドナルドで教わった』
対象著者:鴨頭嘉人
対象書籍ISBN:978-4-10-332881-0

――『人生で大切なことはみんなマクドナルドで教わった』は、鴨頭さんの初めての本です。

鴨頭 二〇一〇年にマクドナルドを離れてから、「絶対に本を書こう」と決めていました。サービス業は、人々に幸福をもたらしうる素晴らしい仕事であること、人を幸福にすることで自分自身も輝けることをみんなに分かって欲しい。それを理屈で言っても説得力がないので、いやでも分かって貰えるように私の体験を中心に書きました。

――大学入学のために上京して以降、アルバイトとして四年、正社員として二十一年もマクドナルドにお勤めになりました。何がそんなに魅力的だったのですか?

鴨頭 マクドナルドは人の可能性に投資する会社で、成長を促すように組織がデザインされているんです。アルバイトはCクルーという一番下のランクからスタートしますが、僕がマクドナルドに入った頃はいかにも見習いっぽい白い帽子を被っていた。仕事で成長すればBクルーになって赤い帽子を被れますし、Bクルーになったらさらに上のAクルーやスウィングマネージャーを目指したいという気持ちが自然に生まれてくる。仕事を通じて、自分が「承認」される機会が頻繁にあるんです。これは気持ちいいですよ。

――シフト管理を担当するスウィングマネージャーになれば、アルバイトであっても経営を学ぶ機会が貰えるんですよね。これも驚きでした。

鴨頭 マクドナルドの社内教育機関は「ハンバーガー大学」と呼ばれています。これはすごいですよ。普通ならお金払って教えて貰うような内容が、時給を貰って仕事として聞けるんですから。

――マクドナルドというとすぐ「マニュアル主義」ということが、やや否定的なニュアンスで語られることが多いですが、「マニュアル」の意味はどこにあるのですか。

鴨頭 マクドナルドを動かしているスタッフの九割以上はアルバイトなんです。彼らに「君たち、自由にやっていいよ!」と言ったところで、戸惑うだけでしょう。マニュアルはあくまで、彼らに安心して楽しく働いて貰うためのツールです。ツールですから、絶対ではありません。そのツールを踏まえて、どれだけお客様に喜んで貰えるか、店の売上げに貢献できるかは、それぞれのクルーにかかっています。

――「名ばかり店長」騒動なんてのもありましたね。

鴨頭 あの頃は、私は地域全体の店舗を見る「スーパーバイザー」という役職にあったのですが、報道を見ていて腹がたちました。私は「日本一のマクドナルド・バカ」を自称していますが、他の社員や店長の多くも、自分の店とマクドナルドのことを心から愛しています。だから、実態を見れば「サービス残業」なのかもしれませんが、それを不満に思う気持ちなんてぜんぜん無かった。むしろ、「こんなに楽しく働けてラッキー!」と思っていたくらいです。

 でも、時代がそれを許さなくなってきたのも事実です。その後、マクドナルドは全社的に残業の削減に取り組み、今では残業はかつての十分の一以下に減りました。子育てしながら店長をしている女性社員も結構いますよ。

――三十二歳の時、新規開業の店舗の店長として「売上げ伸び率日本一、顧客満足度日本一、従業員満足度日本一」の三冠を達成して「最優秀店長」に選ばれています。

鴨頭 その前の店で店長をしていた時は、スタッフを信用できず、店の雰囲気も店舗の成績も最悪でした。新しい店に赴任した時は、「とにかくスタッフを信じよう。まずいこともあるだろうが、その時点の彼らではなく、これから伸びていく未来の彼らを信じよう」と自分に言い聞かせました。すると、彼らが最高の能力を発揮して、店の雰囲気も最高なら売上げも伸びていくという、良い循環が作れたのです。

――それにしても、熱いエピソード満載ですね。

鴨頭 今はだいぶ洗練された会社になっていますけど、私が現場にいた頃のマクドナルドはベンチャーそのものでした。社員にも熱い人が多かった。高校時代は甲子園を目指して野球ばかりしていた自分には、ぴったりの環境だったのかも知れません。

 (かもがしら・よしひと 元「日本マクドナルド」社員)

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