対談・鼎談
2012年11月号掲載
『中の人などいない@NHK広報のツイートはなぜユルい?』刊行記念対談
せっかくの一四〇文字だからできること
糸井重里 × NHK_PR1号
対象書籍名:『中の人などいない@NHK広報のツイートはなぜユルい?』
対象著者:NHK_PR1号
対象書籍ISBN:978-4-10-332951-0
糸井 すてきなPRさん、お久しぶり。本を出すんだって?
PR はい、恥ずかしいんですけど。行きがかり上……てへ。
糸井 おお。まさに「でへべろ~」ですね。
PR 糸井さん、それを言うなら「てへぺろ」ですっ。
糸井 えー、NHK広報局の公式アカウントとして、ツイッターを始めてからこれまでのことを書かれた、と?
PR はい、そうです。実は最初は個人でこそっと始めた非公式だったんですよ。その辺のことから書いてみました。本当に何もわからなくて、やりながら覚えていったことも多かったですから。
糸井 ぼくがツイッター始めたのは二〇一〇年五月だったんですけど、PRさんがNHK_PRで公式になったのが?
PR 〇九年の一二月です。もうすぐ三年になります。
糸井 PRさんのツイートってなぜか返信出したくなっちゃう。ぼくが返信するのは「おお、いい!」っていう時だから。つい「仲間に混ぜてよ」って絡みたくなる。
PR フォロワーの皆さんとはたくさん会話をしようと思って、そしたらいろんな事件があったので、それを書きました。
糸井 じゃ、3・11――東日本大震災の時のことも?
PR 入ってます。
糸井 あのあたりは……PRさん、よく耐えましたよね。ぼくも自分自身でよく耐えたな、って思うもの。
PR できることは何でもやろうと思いました。大変な時だからこそユルいツイートしますって宣言したものの、必死で。
糸井 そう。ぼくもふざけてるってたまに責められるんだけど、それでもユルくしながら涙目になっていたりね……。ほかにも、タフだった事件、あったんですか?
PR 「はやぶさ」です。小惑星探査機「はやぶさ」が帰ってこなかったんです、NHKには。初の「炎上」でした。
糸井 「炎上」? 書き込みが殺到する、あれ?
PR はい。NHKはなぜ「はやぶさ」の大気圏再突入の中継をしないんだっていう苦情がいっぱい来ちゃって……。でも、コールセンターにはほとんど電話がなくて、私のツイッターだけだったんです。
糸井 ネガティブな反応ってこたえますよね。不特定多数の人たちが見ているツイッターの特性なんだってわかっていても、自分に向けられていると思うときつい。それを「ゴクン」と飲み込んで我慢するんだけど、溜まってくると、とても疲れる。
PR ツイッターの限られたたった一四〇文字でしか言えないことも、それがすごい数で集まって増幅すると怖いことになるんだとわかりました……今もたまに凹むことがあります。
糸井 止めちゃえば楽なんですけどね(笑)。というか、いずれ必ず止めなきゃいけない時が来ると思うんだけれど。
PR はい。こちらは異動の多い会社だし、広報局のアカウントとしてやっているので、私でなくてもこのアカウントを運営できる体制は作っていかなくちゃと思っているんですよ。
糸井 でも他の人がやったら当然違うものになりますよね?
PR ただ、フィロソフィーの部分とか、こう考えてやっているというのは、伝えられるんじゃないかなと思うんです。
糸井 微妙な体温みたいなのは無理でも、フィロソフィーは「技術」に置き換えて伝えられるかもしれないですね。
PR はい。この本ではそのことも書いてみたんですけど。
糸井 では、これを読めばみんなNHK_PRに代われると?
PR 「だが断わる」。
糸井 じゃ続くわけで、今後こうしたい、とかありますか。
PR NHKは報道から福祉、子供番組までいろいろあって、同じようにいろんなツイッターアカウントを運営しています。役に立つ情報をご希望の方にふさわしいアカウントもあります。そして、NHK_PRは役に立たないことのほうが多いんです。私はツイッターでせっかくもらった一四〇文字なんだから、どれだけ楽しくできるかを考えていきたいんです。
糸井 「せっかくもらった一四〇文字なんだから」と「せっかく生まれたんだから」とは、考え方が同じですよね。
PR はい。「だったら楽しく生きようよ」って言えたらいいなあと思います。
(いとい・しげさと コピーライター/えぬえいちけいぴーあーるいちごう NHK広報局)