書評・エッセイ

2012年11月号掲載

僭越ながら全国の家庭を代表して御礼申し上げます。

――三國清三『家庭料理の裏技50 ミクニが教えるレシピ集』

伊久美亜紀

対象書籍名:『家庭料理の裏技50 ミクニが教えるレシピ集』
対象著者:三國清三
対象書籍ISBN:978-4-10-333051-6

 シェフ! 三國シェフ!? びっくりするじゃないですか。フレンチの巨匠・世界のミクニが、なぜ、家庭料理を!?
 家庭料理の定義は「一般家庭で日常的に作られ、食べられている料理」。生活情報誌を作り続けて二十年。不肖“家庭生活のエキスパート”としては、『家庭料理の裏技50』三國清三・著と聞いて、失礼ながら“疑心”。だって、あのフレンチのミクニですよ? フ・レ・ン・チですよ?
 一年三百六十五日、毎日毎日、家族のために、なる早・なる安・なる美味(うま)(早くて安くて美味しい)料理を作るべく格闘している主婦の料理と、あまりに掛け離れているのでは!?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(本書完読)
 シェフ。三國シェフ。すみませんでした! 貴著を拝読させていただき、目下、自分の“疑心”を悔いています。この本、スゴイです! 正真正銘の「家庭料理」。しかも、現代の家庭に必要なエッセンスが詰まっています。今、主婦たちが作りたい料理は、「早い、安い、美味しい」にプラスして、プチ・贅沢感があり、みんながワクワクする料理。昨年の震災以降、特にそのニーズが強まっているように思います。「家族がそろって、笑顔で食卓を囲むこと」をイメージして、料理を作りたいと願っているのです。
 三國シェフは、まさに今の主婦たちが作りたいレシピを、本書でズラリ、並べてくださいました。
 さて、完読直後。興奮冷めやらぬ私の感動ポイントを具体的に紹介させてください。
 感動ポイント①は、各章の見出しのシャープさ。肉、魚、野菜、パスタ、ごはん、デザートの章で構成されていますが、例えば肉の章の見出し。『肉料理の基本は、旨みを逃がさない焼き方』。一見普通ですが、肉料理の概念が、シャープにインプットされるのです。魚の章では『〜スパイスと組み合わせ』、野菜の章では『〜たくさん食べるには』……と、レシピに入る前に、各食材の料理概念を把握できる。これって、すごく重要なことだと思うのです。
 感動ポイント②は、レシピ名のワクワク感。『軽い煮込みフルーツハンバーグ』、『カレイの蒸し煮“アラン・シャペル風』、『ミクニオリジナル ラーメンサラダ』、『ピタパン―ジンギスカン』、『フレンチトースト、ママレード味』……。どうです? 作る前からワクワクしませんか? そして実際作ってみると、超簡単だから驚きです。
 感動ポイント③は、贅沢過ぎる内容のコラム。世界の三國シェフが、いとも簡単に裏技や豆知識を公開してくださるなんて! 特に贅沢なのは「料理がパッと引き立つ盛り付けの裏技」コラム。四つのコトをするだけで、いつもの料理があっという間にフレンチテイストに。目からウロコの発想ですが、誰でもできる簡単なコトなのです。続きはぜひ、本書を読んでいただいて……。
 感動ポイント、色々述べさせていただきましたが、ともかく。本書、『家庭料理の裏技50 ミクニが教えるレシピ集』は、今の時代に必要な“新感覚の料理本”なのです。
 実用+夢のつまった料理の本。キッチンでは、レシピを参考にしながら料理をし、寝室では、眠りにつく前にリラックスしながら写真集のように眺める。そんな光景をイメージしながら……本書が、主婦にとっての永久保存版になることを、私は確信しています。
 シェフ! 三國シェフ! 僭越ながら全国の家庭を代表して御礼申し上げます。家族みんなが今日の食事を楽しみにし、団欒をし、笑顔あふれる食卓になる。そんな料理を教えてくださり、ありがとうございました! フレンチシェフ×家庭料理。奇跡の本の実現は、食育分野の重要な担い手として活動を続ける、シェフの食育に対する強い信念が根底にあるのではないかと。「未来の食文化を担う子供たちに本物の食の素晴らしさを伝えたい」。このぶれないメッセージが、根底にあるのではないかと。そう感じています。
 日々、「食」のことを考えている主婦の方々、いえ、すべての方々に本書をお薦めします。この料理本は、きっときっと、皆様の――座右の書――になるに違いありません。

 (いくみ・あき ベネッセコーポレーション「サンキュ!」編集長)

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