書評・エッセイ

2013年10月号掲載

眺めて楽しみ、作って楽しみ、食べて楽しむ。

――福田里香『おやこで作ろう こどもお菓子部』高橋郁代『おやこで作ろう こどもお花部』

いがらしろみ

対象書籍名:
『おやこで作ろう こどもお菓子部』/『おやこで作ろう こどもお花部』
対象著者:福田里香/高橋郁代
対象書籍ISBN:978-4-10-334751-4/978-4-10-334752-1

 子育てが始まり、3年が経とうとしています。はじめての子育てで毎日がいっぱいいっぱい。こどもと一緒に楽しくお菓子作り♪などという、きっと他人が想像するような、素敵な時間は今のところ、あまり実現していません。
 今朝も、「クレープ! クレープ!」と言ってめずらしく意欲的な娘にやってもらったお手伝いは、ボールで卵と牛乳をグルグル混ぜること。それだけでテンションが上がりすぎて飽きてしまい、どこかへ行ってしまいました。出来上がったクレープも2口だけ食べておしまいです(泣)。こうして報われない思いを抱きつつ慌ただしく日常が過ぎていくうちに、日々の子供とのくつろぎタイムも、うっかりテレビやDVDに頼ってしまっている始末。これでは、イカン!と、ただいま反省中の菓子研究家の子育てです。
 そんな私に夢と希望を抱かせてくれる、親子のためのお菓子のかわいいレシピ本が、シリーズの1冊として出版されました。
 福田里香さんは、「果物を愉しむ100の方法」、「ジャム食本」、「フードラッピング」、「クイックブレッド アンド ジャム」や「かき氷の本」、今注目の「自分でつくるグラノーラ」や「フレーバーウォーター」や「まんがキッチン」などなど、切り口がユニークで時代の先を読むテーマのレシピ本を多数出版し続けている料理研究家。私にとって10代の頃からの憧れの存在は、今でも変わらずお菓子の本の楽しさを提案し続けてくれます。
 お菓子作りの中でも化学の実験ばりの面白くて楽しい部分がいかされながらも、かわいくておいしそうなスタイリング、材料もそろえやすく工程もシンプルなレシピばかり。
 アルミホイルでラッピングの工作的な要素も取り入れつつ、男子も喜ぶ昆虫のチョコレート菓子になったり、しそのシロップで淡く美しいピンクになった琥珀羹(本の中では、もっとかわいく宝石かんという名前になってます!)を素敵な指輪に仕上げたりするなんて、琥珀羹は好きじゃなくても、このお菓子は絶対作りたくなります! それに、作ったお菓子は絶対においしく感じられると思うのです! また、日常的な食材、食パンをラスクにしたミトンとりんごのスープは、妄想を頭の中でかき立てられるような写真でシンプルに表現されつつ、もう、キュンと甘酸っぱい気持ちにさせられる絵ぢからがありました!
 レシピの実用書には、まずは眺めて読んで楽しみ、実際に作って楽しんで、そして食べて楽しむ。こんな3段階の楽しさと喜びがあります。このレシピ本はそのすべての段階で自由さを謳歌できるような感じがしました。朝・昼・晩の食事作りとは全然違う、ワクワク感満載なお菓子作りが子供と一緒にできそうです。
 同じシリーズの髙橋郁代さんのお花の本「おやこで作ろう こどもお花部」は、日常の中のちょっとだけ特別な何かになるようなフラワーアレンジの一冊。
 小さなお花をグラスに一輪挿しにしたりするだけでも、部屋がぱぁっと華やぐ感じになり、それを子供のレーダーは敏感に察知して、ちょっと妄想がかったロマンチックな言葉をこぼしてくれたりします。そんな言葉に親はグッときてしまい、お花をもっと生活に取り入れれば、きっともっと充実した日々になりそう!と夢は広がります。
 そして私は巻頭に出てくる、シロツメクサの花冠の写真に、最初からノックアウトされました。昔、どこかの原っぱでシロツメクサを摘んで母親に編み方を教えてもらったものの、最後をどうやって輪にしたらよいのかどうしても分からなくて、結局何度か挑戦したものの、できずに終わった、白いはずのシロツメクサが、いじり倒して茶色に変色したあの光景と、悔しい思い出がジワリと胸に広がりました。あぁ、あの時の自分に教えてあげたい。
 絵本のように子供と眺めながら、一緒に夢をふくらませるだけでも十分に本の楽しみが詰まっている実用書のシリーズ。ここから次のステップで、実際に「虹のアイスキャンディー」に挑戦したり、「押し花のバースデーカード」を作ってみれば、日々の生活の中の鮮やかなイベントとなって、いつか子供の心にポワッと素敵な小さな思い出として残ってくれるんじゃないかなぁと期待したりするわけです。もちろん、永遠の子供心を忘れない大人の人にも、日常に彩を加える為の手近な手段として、お菓子作りやフラワーアレンジの、自由な時間の参考になってくれる本だとも思います。

 (いがらし・ろみ 菓子研究家)

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