インタビュー

2013年11月号掲載

『イン・ザ・ヘブン』刊行記念 インタビュー

三十三年ぶりの短編集……です。

新井素子

新井素子

対象書籍名:『イン・ザ・ヘブン』
対象著者:新井素子
対象書籍ISBN:978-4-10-142605-1

――『イン・ザ・ヘブン』は三冊目の短編集です。

 三冊目というか、基本的に私、デビュー直後からどんどんお話が長くなってしまう傾向がありまして。八十枚でって言われたのに百八十枚書いてしまうとか、そんなことが続いてしまって。ま、ただ、私はとても運がよくって、本来ならそんなもの雑誌に載らない筈なのに、最初に倍以上書いちゃった時は、偶然、私に依頼した編集の方が、発売日を一月間違ってたんです。だもんで、翌月まわしになっちゃうんだから、まあいいかって載せていただいて、次の時は、どなたかが原稿落としたんで載せていただけたんです。

 この書き方だと雑誌から注文がこなくなってしまって。いきおい、書き下ろしが続いて、やってみたら、書き下ろしの方が私には楽だったんです。特に、昔はかなり勤勉だったので、締め切りがなくてもどうせ書いてるし。それなら、締め切りと枚数制限がない方がいいかなって。早川書房から、『…絶句』の依頼を受けた時はほんとに嬉しかったです。「何枚書いてもいいですよ」って言っていただいたんで、ほんとに千枚書いちゃった。

――また短編を書くようになったきっかけがあるのですね。

 私は、SFの新人賞で、星新一さんに認めていただいて作家になれたんです。それで、星さんがお亡くなりになった後、アンソロジーを編まないかというお話をいただきまして……(『ほしのはじまり』)。もう、無茶苦茶はりきったんです。星さんというのはとても丁寧な方で、新人賞の応募原稿は、必ず三回お読みになったんだそうです。星さんのアンソロジーを編ませていただく以上、最低それだけはやろうと思いまして、千編以上ある星さんのショートショートを、全部三回読みました。最初は普通に読んで、次に全部ノートとりながら読んで、そのノートを元にして、「これとこれを収録したい」って思いながらまた読んで……っていうのを、一年以上やっていたのかなあ。そしたら、驚くべきことに、長編が一切書けなくなっちゃいまして。

――その時書いていた長編『もいちどあなたにあいたいな』は、完成までに七年かかっています。

 もう、書いては破り、書いては破りの繰り返しで。この時は、本気で廃業しなきゃいけないかと思いました。ただ、私はミューズって呼んでいるんですが、担当編集の方が非常に執念深かったので、無事に完成することができました。

 そんで、その試行錯誤をひたすらやっている間に、何故かショートショートが書けるようになったんですね。私は、星さんに見いだしていただいた作家ですので、以前、星さんトリビュートのショートショート企画なんかがあった時、声をかけていただいたこともあったんです。でも、その頃は、短いものが一切書けなかったので、参加できませんでした。それがとっても残念だったので、短いものが書けるようになって、そういう企画にも参加できるようになったのは、嬉しかったです。と、まあ、そんなことをやっているうちに、今度は短編も書けるようになりまして。いつの間にか、短編もショートショートも長編も書けるようになってました。

――今回の収録作は、2007年から2013年のものです。

 一度書けるようになると、今は短編書くのが楽しくて。それと、東日本大震災以降、ちょっと変わったお話の作り方をすることが、時々あって。今回の本にも、お話じゃないのが一本だけまざってまして、創作秘話というほどのものじゃないけど、あとがきとあわせてその辺のことを書いてます。

――次の本はどんなものになりますか。

 今、『未来へ……』という相当長いお話を「ランティエ」に連載させていただいているんですけど、これ、書くのが楽しくって。これやりながら、時々短編書くのも楽しい。

 私は、かなり若い時にデビューしちゃったので、作家生活三十何年なんて、昔は想像もしていなかったんです。当時の私にしてみれば、大人って完成している人間だってイメージだったんですけど、実際に自分が年をとってみたら、三十年同じ仕事をしていても、人間って変わるんですね。これはもう、頭で考えて言っているんじゃなくて、実感として、この年になってからもお話の作り方が変化するっていうのは、驚きでした。十代の頃はね、毎年、自分が変化してゆくのは当たり前だったんです。でも、三十代くらいになると、もうあんまり変化はないような感じになってきていたんですけれど……人間、五十代になっても変わる時は変わる。それが判ったのが、とても新鮮で、嬉しいです。

 (あらい・もとこ 作家)

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