書評
2015年3月号掲載
泣き顔は心のバロメーター
――グレッグ・ペンブローク『うちの子が泣いてるワケ』
対象書籍名:『うちの子が泣いてるワケ』
対象著者:グレッグ・ペンブローク著/波田孝介訳
対象書籍ISBN:978-4-10-506851-6
子どもって、ホンマどうでもええことで泣くんです。
私には息子が二人いて、上が四歳、下が一歳の可愛い盛り。日々いろんなワケで泣いてます。
先日長男は、おしっこが出過ぎて泣きました。三十秒ぐらい出続けてるのを見て、「このまま永遠に止まらなかったらどないしよ!」って急に怖くなったらしい。マイナスへの頭の回転が速すぎる!
次男もワケのわからん理由で泣く。この前、一緒にお風呂に入ってたら突然泣き出しました。見たら「取れへん!」と何もついてない自分の腕を掻きむしってる。次男はまだ一歳やから腕がムチムチ、輪ゴムをはめてるみたいに筋ができてるんですけど、なんとその腕の筋を、髪の毛が付いてると勘違いして掻きむしってたんです! 可愛すぎる……。
そんな息子たち以上に意味不明な涙の理由と泣き顔写真が、『うちの子が泣いてるワケ』にはいっぱい入っています。もともと著者のグレッグさんが、息子の泣き顔写真をブログに掲載して、世界中に拡散されていったのが始まりだそう。
例えば、「チーズを半分に割られたから」という理由がある。「そんなんで泣くん!?」って思うかもしれんけど、これは大人で言うと「ほぼ完成してた千ピースのパズルを壊された」のと同じなんです。周りから見たらどうでもいいことかもしれない。でも、当人たちは本気やねんなぁ。
くわばたさんの子が泣いてるワケ。 |
『うちの子が泣いてるワケ』より、くわばた |
グレッグさんのもとに寄せられたメールで一番多かったのは、「些細な理由で泣くのはうちの子だけじゃないと思ったら、ホッとしました」という内容だったみたい。それを知って私も「そうか、親が子どもの涙で笑ったり、悩んだりするのは世界共通なんや!」と安心しました。
そうなんです。親からしてみたら、子どもの涙が辛いときもあるんです。
例えば電車に乗ってるとき、子どもがニコニコ笑ってたら周りの人に「可愛いなぁ」って言われるけど、泣き出したとたんに嫌な顔をされる。
こんなときは親も辛いもんです。でも、そこで周りの人が「この子なりの泣いてる理由があるんやろね」とか、「こんな理由で泣いてるんちゃう?」って一緒に考えてくれたら親も嬉しいですよね。そんな人が増えてくれたら、育児ももっとしやすくなると思う。
実は私、最初この本を読んだときはめっちゃニコニコしてたけど、別の日に見たら腹立ったんです。
なんでやろ? と考えてハッと分かりました。二回目に読んだ時は、育児で手いっぱいだったんです。最初読んだ時は心にも余裕があった。だから笑えたんですね。
子どもを育てていると、子どもがワンワン泣いてても「可愛い!」と思えるときがあれば、ちょっとグズってるだけでイライラすることもある。当事者になったらなかなか一歩引いて見られなくなるけど、この本を開いた時に、そこにある子どもの泣き顔を見て笑えるか笑えないかで、その時の自分の心の状態がバロメーターみたいに分かるなと思いました。
そんな風に育児に追われてる私ですが、ただ今三人目を妊娠中。子どもたちにはいっぱいケンカしていっぱい泣いて、仲良く尊敬し合いながら育ってほしい。育児も今まで以上に大変になるやろうから、旦那とも協力せないかんなぁ。
そやそや、著者のグレッグさんはイクメンらしい。パパの皆さん、育児は夫婦の協力が不可欠です。「何で泣いてるのか分からん」とママに任す人も多いけど、この本片手に「涙の理由は何やろね?」って一緒に考えた方がオモロイで!
(くわばたりえ お笑いタレント)