書評・エッセイ

2015年5月号掲載

朝ドラに見る視聴率の方程式

佐藤智恵『テレビの秘密』

佐藤智恵

対象書籍名:『テレビの秘密』
対象著者:佐藤智恵
対象書籍ISBN:978-4-10-610616-3

 NHK朝の連続テレビ小説「まれ」がスタートしました。初回の視聴率は21・2%(関東地区、ビデオリサーチ調べ)。二〇一三年の「あまちゃん」のヒット以来、「ごちそうさん」「花子とアン」「マッサン」と、どの作品も高視聴率を連発し、朝ドラの人気は衰えるところを知りません。
 新しい朝ドラが始まるたびに筆者がチェックするのが、「王道作品」か「変化球作品」かということ。王道作品とは真っ向から視聴率を取りにいくドラマで、変化球作品とは視聴率よりも新しい顧客層を獲得することを重視した冒険的なドラマのことです。
 王道作品は、「おしん」(一九八三~四年、平均視聴率52・6%を記録)が築いた次の方程式をもとに制作されます。

(貧しい出自+戦中・戦後+職業)×有名女優=高視聴率

「梅ちゃん先生」「花子とアン」などは、まさにこのパターンを踏襲し、成功しました。
 さて、今回の「まれ」。現代劇なので、もちろん変化球作品です。ところが第一週を視聴して、驚きました。何と構造が、「あまちゃん」そっくりなのです!
 三世代の女性がひとつ屋根の下、漁村に住む。主人公の生活は貧しい。父親は頼りなくて、一緒に住んでいない。芸能人(モデルやアイドル)を志す友人がいる。途中から都会編が開始する。主人公は最終的に、小学生女子の憧れの職業(「あまちゃん」ではアイドル、「まれ」ではパティシエ)をめざす……。
 書き出せばキリがありませんが、ここまで「あまちゃん」路線をきっちり踏襲しているとは。もしかして「あまちゃん」は、現代劇の王道作品として位置づけられているのかもしれません。
 このように筆者は、テレビ番組を見ながら、ついつい「この番組は視聴率を獲得するために、どういう戦略をとっているか」を分析してしまいます。NHKと米テレビ局で編成と制作を担当してきたからか、経営コンサルティング会社でメディア企業を担当してきたからか、テレビ番組の裏側を読み解くのが習慣になっているのです。
「なぜマツコ・デラックスさんは視聴率女王となったのか」
「なぜ池上彰さんの選挙番組は高視聴率なのか」
「なぜ『相棒』の人気は衰えないのか」
 ……等々。本書は、テレビの「なぜ」に経営学の視点から答える本です。人気番組にはすべて、視聴者を離さないための戦略が隠されています。反対に、うまくいかない番組には、うまくいかないなりの理由があるのです。
 ドラマからバラエティ、選挙報道まで、分析した番組は約二十。筆者のようにテレビが大好きという方から、テレビはあまり見ないという方まで、テレビ番組の意外な奥深さを再認識していただければ幸いです。

 (さとう・ちえ コンサルタント)

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