書評

2016年5月号掲載

予約殺到の人生相談が、読めます

――木村藤子『幸せの「気づき」相談』

新潮社企画編集部

対象書籍名:『幸せの「気づき」相談』
対象著者:木村藤子
対象書籍ISBN:978-4-10-324143-0

 青森県むつ市。
 恐山もそう遠くない同市のある場所を目指し、毎日多くの方が訪れます。
 彼らが向かう場所は霊能者・木村藤子さんの拝殿。木村さんはここで連日、悩みを抱えた相談者たちを受け入れています。
 木村藤子さんは、1990年に行方不明になったニシキヘビを「透視」によって発見してから、"青森の神様"として一躍全国で有名になった霊能者。三十代の時に透視力、除霊力のご利益を授かって以降、その能力を使い、また神からの言葉を相談者に伝えることで、三十年以上、数え切れないほど多くの人々を救ってきました。
 この木村さんの「相談」は口コミなどを通して広まり、今や相談しようと思えば数ヶ月前から予約する必要があるほどの人気だそう。木村さんはほぼ毎日、早朝から相談者を受け入れていますが、その人気と青森県むつ市という場所ゆえに、全ての方がこの地を訪れることはできません。
 木村さんはそのような状況に心を痛めていたと言います。
「悩みを打ち明けたい、相談したい。幸せになりたい!
 今すぐにでも悩みの原点に気づきたい!
 ......でも、相談に行くことは難しい。
 少しでもそんな方の一助になればと、この本を書きました」 (「はじめに」より)
『幸せの「気づき」相談』は、三十年以上続けてきた木村さんの相談から、多くの人に共通する悩みを厳選した、著者の集大成ともいえる書籍です。
 本書に収められている相談は全部で22。「息子がいじめを受けている」「夫を生理的に受け付けない」など家庭の悩みから、将来への漠然とした不安まで、誰しも経験する、あるいは直面する可能性のある、普遍的でありながら解決のなかなか難しい悩みです。
 相談に訪れた人に対して、木村さんはまず、彼らの普段の生活やこれまでの人生を透視します。そうすると問題解決の糸口、その人自身の直すべき点が浮き彫りになってくるといいます。木村さんがそこで見えたものを相談者にそのまま伝えることで、相談者は客観的に自分の行いを見つめる機会を得ることができるのです。
 例えば、この本に登場する六十代の女性は、夫からの暴言に耐えられないと相談に来ました。しかし、透視をすると、実際に若い頃から暴言を吐き続けてきたのは彼女の方だったことが分かります。夫の暴言は、長年彼女から汚い言葉を受け続けてきた苦痛が、定年後になって表面化してきたものでした。
 このように、多くの悩みが、相談者自身の性格上の欠点や、直すべき部分から生じており、それを自分の力で見出すことこそが「気づき」なのだと木村さんは説きます。「相手が悪い!」と決めつける前に、まずは自分自身に悪いところがなかったか省みる必要がある、とも言い換えることができるでしょう。自らの力で得た「気づき」は、着実に相談者の心に根を下ろします。
 本書は、自分の足りない部分、欠点に「気づく」ためのヒントにあふれています。著者はどんな相談にも必ず普遍性を見出して解説しているので、「関係ないな」と思われる悩みでも、自分に引き合わせて考えることができます。
 実際の相談の形式・語り口を活かしているため、その語り口は柔らかく、読んでいると木村さんに語りかけられているようにも感じます。親しい人に相談するような気持ちで、いつの間にか自分自身をも見つめ直し、悩み解決の糸口も見つけることができるはず。あと必要なのは、一歩踏み出す勇気だけです。
 気軽に入れる入り口。でも、そこから出たあとは違う景色が見えてくる――。人生が変わるかもしれない相談集、ぜひ手に取ってみてください。

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