書評
2016年5月号掲載
「おかしな国」の根源
室谷克実著『韓国は裏切る』
対象書籍名:『韓国は裏切る』
対象著者:室谷克実
対象書籍ISBN:978-4-10-610665-1
「おかしな」――つまり笑ってしまうという意味でも、不可解なという意味でも、韓国が「おかしな国」であることは、今やおおかたの日本人が認識していよう。問題は、なぜそうなのかだ。
三年前に出版した『悪韓論』(新潮新書)では、その「おかしな国」の病的症状を明示することに重点を置いたが、今回は、そもそもどうして「おかしな国」になったのか、その根源を探った。
私が見るところ、第一の要因は戦後七十年の反日教育を通じて、大部分の国民がファンタジー歴史観に染まりきっていることだ。
韓国のファンタジー歴史観は、①われわれは五千年の歴史を持ち、かつては中国の中原を支配していた世界一優秀な民族である、②未開の倭国にあらゆる文化文明を教えてやったのに、日帝は恩を忘れ半島を蹂躙した。そのため近代史の出発に後れを取った。従って「諸悪の根源は日本」である――と展開される。
第二の要因は、その日帝が大韓帝国への内政干渉によって崩壊させた身分制度を、戦後になって彼らが事実上復活させてしまったことだ。
戦後の身分制度は法律には依らないが、李王朝時代の〈両班─常民─奴婢〉という世襲身分が、〈財閥一族と番頭たち─ホワイトカラー─ブルーカラー〉という固定性の強いヒエラルヒーに置き換えられた。支配階級の両班が何をしても咎められなかったように、今日の韓国でも「有銭無罪」という現実がまかり通っている。
第一の要因は、主として国外に発せられる「告げ口外交」などの背景をなす。一方、第二の要因は、韓国内で起きる「おかしな国」現象に結びつく。「ナッツ姫」事件などは、その典型だ。
では、「おかしな国」の中心にいて指揮を執っている人々の判断力は"まとも"なのかどうか。二一世紀になってからの大統領である盧武鉉、李明博、朴槿恵の三氏についてとくに検討した。その結果は、本書を見てのお楽しみに。
また、他書には決してない、本書の「強み」と自負しているのが、「韓国とは日本人にとってどういう国なのか」を、六〇年代から今日まで六百六十六カ月分、半世紀以上に亘る世論調査の数字に基づいて分析していることだ。
例えば、世間では長らく「嫌韓派=ネトウヨ=低学歴・低収入層」と信じられてきているが、世論調査分析では、むしろ相対的に高学歴・高収入層に「嫌韓派」の比率が高く、逆に低学歴・低収入層に「好韓派」が多いことが裏付けられた。
そして、日本人にとって韓国が、「事実を知れば知るほど嫌いになる国」であることが、データを通じて浮かび上がってくるのである。六百六十六カ月の世論調査のうち、「嫌韓派」の比率が「好韓派」を下回ったのは、たったの七カ月だった。
(むろたに・かつみ 評論家・元時事通信社ソウル特派員)