書評・エッセイ

2017年9月号掲載

心霊手術で消えた親父のウオノメ

――岡本和明/辻堂真理『コックリさんの父 中岡俊哉のオカルト人生』

岡本和明

対象書籍名:『コックリさんの父 中岡俊哉のオカルト人生』
対象著者:岡本和明/辻堂真理
対象書籍ISBN:978-4-10-324533-9

 中岡俊哉とは何者なのか、いま四〇代以下の方は、あまりご存じないと思う。
 彼は超常現象研究家で、ライターで、テレビ番組企画者でもあった。特に、一九七〇年代には『狐狗狸さんの秘密』がベストセラーとなり、全国の中学生を中心に、コックリさんが大流行した。また、『恐怖の心霊写真集』では心霊写真ブームを巻き起こしてもいる。生涯に二〇〇冊の著作を手がけ、三〇〇〇本のテレビ番組にかかわり、二〇〇一年に七四歳で亡くなった。
 私は、その中岡俊哉(本名・岡本俊雄)の息子である。演芸研究家として、落語や浪曲の本を上梓するたびに著者略歴を見たひとから「あの中岡俊哉の息子さんですか」と不思議そうに言われてきた。確かに当時のテレビでは、連日、オカルト番組をやっていて、そのすべてに親父が出ていたのだから無理もない。家で本人に会うことなど、めったになく、家族でテレビを見ては「親父、元気そうだね」なんて言っていたほどだ。
 本書は、そんな中岡の全生涯を追う評伝ノンフィクションである。戦前を中国で過ごした親父が「東峰輝」という中国名を持ち、三度の臨死体験をしていることや、中国共産党下の北京放送局で働いていたことなどは、おそらく今回初めて明かされる話だと思う。
 引き揚げ後は、北京時代に集めていた中国の怪談・奇談を連載読み物に仕立てて、千葉日報へ持ち込んだ(当時は千葉県館山市に住んでいた)。これが人気になり、やがて親父は、当時、続々と創刊され始めた少年少女向けの漫画週刊誌に怪奇読み物を書くようになる。「テープレコーダーは知っている」「少女を引き込んだ湖」「死を呼ぶ羽子板」など、あらゆる雑誌に書きまくった。
 共著者の辻堂真理氏は放送作家だが、若いころから親父のもとに通い、テレビ界の大先輩として、いろいろ相談に乗ってもらっていたという。晩年は、かなり突っ込んだインタビュー取材を行なっており、私などよりはるかに、親父のことをよく知っている。
 あらかじめ断っておくが、本書は、心霊現象や超能力の有無を追う内容ではない。そんなことは、私にもわからない。しかし、私は「見ている」のだ。ひとつは、親父が南米取材から帰ってきたとき。足の裏に巨大なウオノメがあったのに、きれいになくなっていた。ブラジルの心霊治療家ホセ・アリゴーの心霊手術で、えぐりとってもらったのだという。その模様は現地新聞でも紹介され、本書にも再録した。
 もう一つは、スプーン曲げだ。
 あるとき、親父が能力開発に協力していたJ少年を自宅に呼んで実験を行なったのだが、確かに私の目の前で、スプーンの柄がグニャリと曲がったのである。しかも、そのスプーンは、その後も勝手に曲がり続け、ついにUの字になってしまったのだ。
 一時、親父はスプーン曲げがインチキだと、ものすごいバッシングを受けたが、まったく意に介さなかった。超能力者クロワゼットをオランダから呼んで、行方不明の少女を透視予知する番組を制作し、予知したとおりの場所で遺体が発見されたときは、いろんな意味で社会問題にもなった。それでも動じなかった。
 あのバイタリティがどこから生まれたのか。本書で、あの時代の熱気をもう一度思い出していただければうれしい。なお、本書のカバー裏にはコックリさんの文字盤が印刷されているが、これは親父が監修したオフィシャル版である。

 (おかもと・かずあき 演芸研究家)

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