対談・鼎談
2019年9月号掲載
日向坂46『日向坂46ファースト写真集 立ち漕ぎ』刊行記念対談
何かが常に起きていた、予定調和のない5日間
YOROKOBI × 加藤アラタ
坂道シリーズの元気印、「日向坂46」初のグループ写真集の刊行を記念して、4泊5日の沖縄撮影で、メンバーを一番近くで見ていたカメラマン二人が対談。
“ハッピーオーラ”な写真はどうやって生まれたのか、舞台裏を語る!
対象書籍名:『日向坂46ファースト写真集 立ち漕ぎ』
対象著者:日向坂46
対象書籍ISBN:978-4-10-352781-7
――撮影を終えて、いかがでしたか。
YOROKOBI(以下Y) 僕はいい思い出しかないですね。こちらでやろうと思ってできなかったことはありましたが、それはそれで良かった。
加藤アラタ(以下K) あ、それはわかる。「この場所で撮影しよう」といった大きな枠組みはこちらで決めておくけれども、その中で彼女たちがどう振る舞うかというのは予想できない、というのがいいなと僕も思っていました。ちょっと舞台のようなドキュメンタリーというか。
Y そうそう。こちらが想定してたことをそのままやっちゃうとつまらなくて、全然違うことが起きた方がいいものができると思います。予定調和で終わってほしくない。突拍子もないことが起こった方が、作り手も読み手も、みんながワクワクして見られる気がしますね。
K ただ、カメラマンは予期せぬことを追っかけていくことになるから、絶えず目を光らせている必要がある。何かが常に起きていて、あらゆるところで撮影したい絵があって、どっちを追うか選択を迫られるという、大変ながらも幸せな時間でした。あと、これはアートディレクターの平原史朗さんの采配が見事なのですが、写真集には僕らが追いきれていない、フレーミングとして完全じゃない写真もあって。例えば、ビーサンがたまたま脱げた場面が拾われている(a)。でもそれがこの写真集を重層的にしてくれていて、彼女たちの過ごした時間を見ているような気分になれます。
――ご自分で撮った印象的なカットを教えてください。
Y 僕は制服組に地元のお店で好きなものを選んでもらったカット(b)です。実はこれ、本当に彼女たちの朝ごはんなんです。こちらのお店が朝早くに開いていたんですね。すごい早朝からの撮影だったので、みんなお腹もペコペコ。だから、本当に食べたいものを選んでもらって、みんなに食べてもらいました。メンバーのそのまんまの雰囲気が、このカットに写っているなと思って。
K 僕は、スイカ割りのカット(c)ですね。今回、天気が不安定な状況が多かったんですが、スイカ割りでは、すごく綺麗な光が出て、そこで振舞うみんながキラキラしていて。そのタイミングで晴れるかどうかとか、太陽の位置がどうかとか、予測はできない。奇跡的な瞬間を捉えられた、立ち会えたという感じでした。全部が全部いい瞬間。実際にその雰囲気が写ってくれているなと思えます。
Y あと、カットではないんですが、別日に撮った影山(優佳)さんの撮影も印象的でした。集合写真を見た影山さんが、「みんなに会いたい」とつぶやいていて。この時、教室には21個の机を並べたのですが、「この席は○○が座っていそう」と言う姿を見て、いつもメンバーのことを考えているのかなという感じがしました。当たり前だけど、お休み中ではあっても、日向坂46のメンバーだなと思ったんですよね。
――お互いの好きなカットを教えてください。
K なんだか照れるな。雨が降ったり、時間の制約だったりと、色々難しい状況があった中で、あらかじめ待ってたくらいの、夕景の走っていくカットは最高だなと。誰もこちらを向いていないけど、日向坂46を象徴しているようでジーンときます。撮影も終盤で、まるでシナリオのように、これに向かって撮影が終わっていくという場面です。
Y いや、偶然です。すべて偶然。メンバーたちの自由な行動から生まれた奇跡だと思います。狙って撮ってない。メンバーの自由さも良かったし、そういう環境を周囲に作っていただいたのもありがたかったですね。全撮影が終わったあとだったのですが、あまりに夕景が素晴らしかったので、急遽「ここで今撮ろう!」となりました。僕は上村(ひなの)さんの横顔のカット(d)が好きですね。赤い「肉」の字(編集部注:「港内徐行」の「内」の字です)の背景と上村さんの横顔の、構図の力強さが素晴らしいなと。デザインされた写真だと思います。
K 「肉」ではなかったけど......。この時は上村さんのソロ撮影だったんですよね。確かに、今回の写真集のような、ライブ撮影みたいな追い方と、一人に対する撮影では撮り方が違うかも。
Y 僕は、アラタさんと、撮りたいもの、美しいと思うものは一緒な気がする。「美しい」をどうやって撮るかが違っていて、ちょうどいいバラバラ感なんですよね。僕の写真と、アラタさんの写真、どっちかだけだったらメリハリがもっとなかったような気がします。
K 本当に。天気のように、メンバーたちの流れと気持ちが移り変わっていくのが良かった。写ろうとしてくれてるけど、いい意味で本能的。その時に彼女たちがやりたい仕草や表情はこちらのコントロール外。未完成の今だからこそ撮れた写真集ではないでしょうか。
(よろこび カメラマン)
(かとう・あらた カメラマン)