書評・エッセイ

2019年10月号掲載

リスと友になった獣医師の物語

竹田津実『生態写真集キタリス』

対象書籍名:『生態写真集キタリス』
対象著者:竹田津実
対象書籍ISBN:978-4-10-447303-8

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 傷ついた動物を治療して野生に返す"森の獣医さん"竹田津実先生の最新作。今回はキタリス(工ゾリス)が主人公です。退院後も続いた"元患者"のリスと獣医師との間に芽生えた不思議な友情から、物語は始まります。
 野生動物を撮影する写真家はたくさんいますが、獣医師と"元患"という立場が生み出す独特な距離感と親密さは、他の人にはどうしても真似できない視点です。ペットのような従属の関係でもなく、同じ森の住人として、もっというなら気心の知れた"友"としてお互いの存在を認め合っているからこそ撮れた野生の物語が、"リス語"で語りかけるようなテキストを添えて、四季折々の北海道の森の風景の中で繰り広げられます。

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「みんながあんまりカワイイと言うから、かわいくない写真ばかり選んだんだ」と先生はおっしゃいますが、登場するリスたちの表情は、本当に愛らしい。だけど、かわいいばかりではありません。
「生態写真集」と銘打っているとおり、採餌、巣作り、恋、出産、子育て、旅立ち、そして別れまで、知られざるリスたちの野生の姿を、十余年にわたって見守り続けた、北の森の"観察記"でもあります。
『子ぎつねヘレンがのこしたもの』などキタキツネの物語で知られる獣医師が、もうひとつ、大切にしてきたライフワークが「キタリス」、その完結編です。

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