書評・エッセイ

2019年10月号掲載

「面白い」には理由がある

佐々木健一『「面白い」のつくりかた』

佐々木健一

対象書籍名:『「面白い」のつくりかた』
対象著者:佐々木健一
対象書籍ISBN:978-4-10-610830-3

 誰もが「面白い」ものを欲している。面白い本や映画、番組、体験、小話など。ビジネスの世界でも、企画やアイデア、プレゼンなどあらゆる場面で面白さは求められる。にもかかわらず、
「そもそも"面白い"って何?」
 という根本的な問いについて語られることはない。考えてみれば実に不思議な現象だ。
 私の本業はテレビ番組制作だが、会議や打ち合わせで皆口々に「もっと面白くならないかな~」などと言う。だが実は、面白いとは何なのか、よく分からないまま、それぞれが感覚的に、闇雲に面白さを追い求めている。
「そりゃ、面白いって人それぞれだから......」と、貴方は思うかもしれない。確かに、個人の好みや主観による。故に「定義できない」と考える。
 しかし、世の中には歴として「面白いもの」と「面白くないもの」が存在する。例えば、すぐに忘れてしまう作品もあれば、何年経っても心に残る作品もある。いつも退屈な話をする上司もいれば、大観衆を前に魅力的なプレゼンを披露するCEOもいる。その違いは一体、何なのか。
 私は、様々な番組制作や執筆活動を続けながら、「面白いとは何なのか?」について考えを巡らせ、一つの結論にたどり着いた。それは、
「面白いとは"差異"と"共感"の両輪である」
 という一文にまとめられる。共感はよく耳にする言葉だろう。では、差異とは何か。辞書には「違い」とあるが、私の場合はもう少し広い概念を指す言葉として用いている。
 まさに"盲点"の命題「面白いとは何か?」をきっかけに、企画やアイデア、リサーチ、演出、構成、マネジメントについて根本から見つめ直した本書。改めてその疑問に立つと、「面白い」を生む方法論も見えてくる。
 例えば、面白い企画やアイデアは、ある日突然、天から何かが下りてくるように思いつくものだと捉えてはいないだろうか。だが、実際には「アイデアは組み合わせによって生まれるもの」なのだ。
 演出とは何か。実はエンタメ業界に限らず、一般の人も日常的に演出している。「演出とは状況設定である」と捉えれば、あらゆる人に関係する。
 構成(ストーリーテリング)は、物事を効果的に伝える根幹だ。構成の良し悪しによって、面白さも一変する。「物語をつむぐ」というと大袈裟に聞こえるが、構成の本質は「何をどういう順番で語るか」。そう捉えれば、効果的に構成を練るやり方も自ずと導き出せるのだ。
 巷では、すぐに役立ちそうなノウハウを列記したビジネス書が人気だ。しかし、最も着実で成果が期待できる思考や技術は、物事を根本から見つめ直し、本質を捉える方法以外にない。そして、それこそが「面白い」を生む近道となるのだ。

 (ささき・けんいち TVディレクター/ノンフィクション作家)

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