書評

2020年1月号掲載

とりあたま元年

最凶コンビよ 永遠に!編

西原理恵子、佐藤優

表現の自由、ここに極まれリ。こんまり、ZOZO前澤、ブラック部活、日韓問題……今宵も平成の、そして令和の世相をメッタ斬る!
10年にわたって「週刊新潮」で連載された名物コラム、万感の最終巻!

対象書籍名:『とりあたま元年 最凶コンビよ永遠に!編
対象著者:西原理恵子/佐藤優
対象書籍ISBN:978-4-10-301940-4

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ダサいタマ

  (「週刊新潮」2019年3月21日号掲載)

 埼玉県を小馬鹿にした映画『翔んで埼玉』が大ヒットしている。筆者は東京の病院で産まれたが、その数週間後から高校を卒業するまでは埼玉県大宮市(現さいたま市)で暮らした。そして去年(2018年)から母校の埼玉県立浦和高校で総合科目を担当している。今年からは、浦高の後輩が校長と教頭をつとめている関係で川口北高校でも特別講義を担当する。埼玉に愛着があるから仕事を引き受けたのである。「ダサいタマ」と言われて、気にする人もいるが、そうでない人もいる。筆者の場合、全然、気にしない。東京のように洗練されていないところに埼玉の強さがあると考えるからだ。50歳を回ってから、大宮市立大砂土(おおさと)小学校時代の同級生と会う機会が増えた。大宮で会合が行われるので集まりやすいからだろうが、出席者の8割は今も埼玉に住んでいる。地元で就職、結婚した人、東京に通うが、住居は埼玉にしている人もいる。筆者の理解では、埼玉はハイブリッドな共同体なのである。村や集落のような地縁的関係も残り、神社を中心にした祭りも多い。これはコミュニティ型の共同体だ。それに対して、自発的に加入する会社、学校、学習塾、囲碁の会、アマチュア無線クラブなどアソシエイション型の共同体もある。この二つの共同体を渡り歩いて、適宜、楽しめるところに埼玉の魅力がある。埼玉県民の多くがこういうハイブリッドな生活をエンジョイしているので、「ダサいタマ」と言われても聞き流しているのだと思う。
 (文・佐藤優)

【編集部記】
 本稿は、12月24日に発売された西原理恵子・佐藤優『とりあたま元年 最凶コンビよ永遠に!編』の採録。同書は、「週刊新潮」2018年5月31日号~2019年4月25日号掲載「週刊鳥頭ニュース」の単行本シリーズ最終巻。米朝首脳会談や日韓対立、北方領土問題など、混迷を極める世界情勢にはじまり、ZOZO前澤の「一億円お年玉」の狂乱ぶり、そして裏口入学問題、バイトテロといった社会問題まで、お騒がせニュースを徹底網羅。荒れに荒れた平成の世相、そして令和時代の展望を、最凶コンビがマンガとコラムで解説している。

 (さいばら・りえこ マンガ家)
 (さとう・まさる 作家)

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