書評・エッセイ

2020年1月号掲載

人間関係の「地雷」はすぐそこに

田中優介『地雷を踏むな――大人のための危機突破術

田中優介

対象書籍名:『地雷を踏むな――大人のための危機突破術
対象著者:田中優介
対象書籍ISBN:978-4-10-610840-2

 百万回の殺害予告を受けた弁護士がいます。実家の墓まで荒らされたそうです。ネット上の誹謗中傷案件を手掛けたところ、自らが標的にされてしまったのです。また、取引先から一方的に仕事を打ち切られたサラリーマンがいます。落ち込んだ様子の取引先の女性社員の相談に乗り、飲食をしつつ励ましたところ、セクハラ告発がなされ、企業対企業の大問題に発展してしまったのです。
 普段の仕事や生活の中にも、危険な「地雷」が埋まっていることにお気づきでしょうか。
 私が社長を務める株式会社リスク・ヘッジは、企業への危機管理のアドバイスを業務としており、創業して二十二年になります。年間二百五十日稼動、一日に平均二回のコンサルを行っていますので、延べ一万回を越す事例と教訓を蓄積している計算になります。
 入社以来、それらを読み込んで分かったのは、あらゆる危機の根源にあるのが人間同士の衝突だということでした。それは、前職の時計メーカーの危機管理部署でも強く実感したことでもありました。そんなことからふと思ったのです。
「危機管理のノウハウは、企業だけでなく、個人の生活にも役立つのではないだろうか」
 それが、本書『地雷を踏むな』の執筆を思い立つきっかけでした。
 危機管理には予防と事後という、二つの側面があります。予防の柱の一つが、「人間関係のデザイン」です。人間関係というと、「自分はちょっと苦手なんだよな」、あるいは「私は誰とでもすぐ親しくなれる」などという思いが浮かぶことでしょう。でも、少し細かく考えてみるとどうでしょうか。例えば仕事上知り合った相手と、「どれくらい親しくコミュニケーションを取るか」「会社以外の場所で会うかどうか」「業務内容や自分の会社の情報を、どれくらい口にするか」――などは、ほとんどの方が「相手に合わせて」「なりゆきで」進めてはいないでしょうか。
 あらかじめ、相手との距離感を定めるデザインをしておかなかったために、ボタンの掛け違いが起き、衝突から大きなトラブルに発展してしまった例をたびたび見てきました。冒頭でお話ししたサラリーマンの例がこれに当たるでしょう。
 人間関係は自分でデザインするものと捉えておくと、トラブル防止になるほか、相手の立場が変わったときに冷静な判断がしやすくなります。例えば幼馴染が反社会的勢力とつながっていると分かったとき、上司が退職したとき、自分の親が年老いたときに再デザインするわけです。
 本書には「地雷」を回避するための基本から、もし踏んでしまった場合の「事後」のリカバリー法までを盛り込みました。皆さんご自身のために使って頂けたらと願ってやみません。

 (たなか・ゆうすけ 企業の危機管理コンサルタント)

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