書評・エッセイ

2020年10月号掲載

一筋縄ではいかない

久世芽亜里『コンビニは通える引きこもりたち』

久世芽亜里

対象書籍名:『コンビニは通える引きこもりたち』
対象著者:久世芽亜里
対象書籍ISBN:978-4-10-610874-7

 引きこもりと言えば、自室や自宅にこもり、外に出ないもの――。そんな風に思っていませんか? 実際は、9割近くが近所のコンビニ程度の外出はしており、自宅から出ない人は少数、自室からもめったに出ないという人は稀です。
 引きこもりは、昨年起きた2つの事件(登戸通り魔事件、元農水事務次官長男殺害事件)や「8050問題」が取り上げられたことなどから、大きな注目を集めています。引きこもりという言葉自体も20年以上前から使われており、十分に浸透しています。
 ですが様々なイメージや事件による報道が先行し、その実態が正しく理解されているとはとても言えません。そこで本書ではその理解を進めるべく、引きこもりに関する様々な事柄を、支援現場に居る立場から書かせていただきました。
 私が所属する「認定NPO法人ニュースタート事務局」は、1994年から25年以上、引きこもりなどの若者の支援活動をしています。訪問活動と共同生活寮の運営がその中心で、これまで1600人以上を支援してきました。私はそこで年間約150組(今年はかなり減っていますが)の親御さんの対面相談や、ブログやメールマガジンなどの文章での発信を担当しています。
 本書のキーワードは、引きこもりにまつわる「多様性」です。
 コンビニに通える人から、自室からもほぼ出ずに親も何年も姿を見ていないという人。学生時代のいじめがきっかけという人から、10年同じ会社に勤めていた後に引きこもりになったという人。引きこもり半年という人から、30年という人。親子で外食に行き仲良く会話する人から、親を骨折させるほどの暴力をふるう人。健康な人から、精神疾患や発達障害がある人。
 引きこもりと一括りにされますが、その実態はとにかく多様です。私自身が相談を受けたケースや、団体として支援したケースを元にした事例を入れることで、その多様さがイメージしやすくなるようにしてみました。
 多様な実態には多様な支援によって対応するしかありませんが、それゆえに親が迷ってしまうことはよくあります。うまく解決できない親には、言いがちな言葉と定型的な考え方が共通してあります。そうした状態から抜け出すためにはどうすればいいのか。私たちの支援の実態から、親に求められる「変化」と「覚悟」についても記してみました。
 本書は、引きこもりをあまり知らない方に向けて、なるべく客観的な視点で全体像を伝えることを目指して書きました。正しい理解が、この大きな社会問題の解決への第一歩となるはず、と信じています。

 (くぜ・めあり 認定NPO法人ニュースタート事務局スタッフ)


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