書評
2026年2月号掲載
「がまん」はやめよう
和田秀樹『死ぬまで元気―88の読むサプリ―』(新潮新書)
対象書籍名:『死ぬまで元気―88の読むサプリ―』(新潮新書)
対象著者:和田秀樹
対象書籍ISBN:978-4-10-611113-6
長生きを願わない人はあまりいませんし、生きる以上は最後まで元気でいたい、というのがほとんどの人の希望だと思います。では、死ぬまでずっと元気でいるためには、なにをすると効果的でしょうか。多くの方は、いろいろなことを「がまん」すべきだと考えます。でも、実は、がまんはとても体に悪いのです。
がまんは免疫力の敵だ、と知ってください。
がまんをすればストレスが溜まりますが、ストレスに弱いのがNK細胞です。この免疫細胞は普段から体内を見回り、がん細胞の候補が生まれたら掃除してくれるのですが、ストレスがたまると活性が落ちてしまいます。日本人が美徳だと思っているがまんを重ねた結果、がんになってしまうなんて、とても皮肉です。
それでも、医者は「お酒を控えましょう」「タバコをやめましょう」「塩分を減らしましょう」とがまんを強います。そういわれたら、やっぱり医者には従ったほうがいい、と思う人が多いと思いますが、ここで少し考えてみてください。
たとえば減塩の指導は、高血圧が原因の脳卒中を予防するためのものです。でも、脳卒中で亡くなる人は激減し、いまやがんで亡くなる人が、出血型の脳卒中で亡くなる人の10倍もいます。
ということは、塩気が足りないのをがまんしてストレスをためたばかりに、がんになって亡くなる人の数が、塩分を減らすことで予防される脳卒中の数より、多いかもしれないのです。
だったら、がまんには意味がありません。
そもそも脳卒中で亡くなる人が減ったのは、減塩運動や血圧の薬の効果もあるでしょうが、一番は血管が破れる人が減ったからです。脳卒中で亡くなる人が多かった昭和30~40年代には、高いほうの血圧が160や150程度で、血管が破れる人がよくいました。でも、日本人の栄養状態がよくなるにつれ、血管は丈夫になりました。
血管にはたんぱく質が不可欠です。また、一般に悪いものと決めつけられているコレステロールにも、血管の壁をつくる作用があって、そのおかげで血管が破れにくくなったのも事実です。つまり、しっかり栄養を摂り、とくに肉を食べて、たんぱく質やコレステロールを摂取するようになったからこそ、日本人は脳卒中にかかりにくくなったのです。
高齢なので肉は控えめにする、という人が多いですが、むしろ逆です。年をとるほど、肉をがまんしては逆効果なのです。がまんをせず、栄養をしっかり摂ることこそが、ずっと元気でいるための秘訣だと思ってください。『死ぬまで元気―88の読むサプリ―』にも書きましたが、高齢者に大事なのは、「引き算」よりもむしろ「足し算」。この発想の転換が、死ぬまで元気でいるためには大切です。
(わだ・ひでき 精神科医)




