書評

2026年3月号掲載

人生は嫌なことだらけだけど

オッドジョブ 絵、たけむらたけし 文『アイラブみー よくわかんないけど、なんかヘン…?』

みなみかわ

対象書籍名:『アイラブみー よくわかんないけど、なんかヘン…?』
対象著者:オッドジョブ・絵/たけむらたけし・文
対象書籍ISBN:978-4-10-355183-6

アイラブみーとの出会い

 僕の家の土曜日は、僕の仕事が午後からの時とか、僕も妻も一階に降りてきてぼーっとしています。二人の子どもたちは、iPadやゲームをしたいんだけど、制限時間があるから、テレビをつけてみんなで眺めている。そんな隙間に流れていたのがNHK Eテレの「アイラブみー」でした。
 最初は「可愛い絵柄やな」くらいだったんです。でも、寝ぼけながらぼんやり見ているうちに、「この絵柄で、こんなテーマにするんや」と印象的で。子どもの感情の動きとか、コミュニケーションにおけるちょっとした「突っ掛かり」をテーマにしていて。お笑いのネタで言うと、面白い、面白くないとはまた別に、「そこ突くんや」みたいな。それが最初の印象でした。

「ウケてるからいいよな」と思った子ども時代

 最近、長男が服をびしょびしょにして帰ってきたことがありました。周りが笑ってくれるのが嬉しくて、自分で友達に「水をかけて」と頼んだらしいんです。妻は「笑うと笑われるは違うよ」と心配していましたが、自分に置き換えたときに、僕は笑われてたとしてもウケてるからいいよなって思う子ども時代ではあったんです。そういう、ただこの場が明るくなることに満足する子ども心っていうのもあるよなって感じたんですよ。「自分にもそういうことあったなー」と、僕は何も言えずにいたんですよね。
 もちろんエスカレートしていじめになるとかは嫌だけど、人間関係の摩擦は避けられないから、全部排除するのも違うなと思っていて。今の世の中、少し潔癖すぎる気もするんですよね。子どもには、どうしても嫌になったら「家にいて、一緒にトレーニングしよ」と言いたいですね。誘うと「いやや」と言われますけど。

「嫌なこと」にどう対応するか

 僕の親父は、キレたら手がつけられないほど怖かったんですよ。姉が高校生の時にバイトをしたいと言っただけで窓から教科書を全部放り投げられたり、僕が学校に遅刻を2回しただけでTシャツがビリビリになるまで引きずり回されたり。でも、その「とんでもなく怖いもの」が家にあったからこそ、僕はグレなかったと思っています。
 今の時代、そんな教育はできません。でも、一歩外に出れば人生はそういう嫌なことだらけです。僕自身、「嫌なこと」をどう回避するか、あるいはどうやり返すかを考えて生きてきました。僕、高校でアメフト部やったんですよ。その時170センチ47キロとめっちゃ細くて、それを先輩にすごい馬鹿にされていじられた時代もあって。でもそれを避けるために考えた手立てが、僕の場合は「おもろい」と認めてもらうことだったんですよね。嫌なことはあるけど回避もできるっていうのを発見したんです。もちろん人が嫌がることはやるなって子どもには教えるけど、やられることは避けられない。そこから逃げることは簡単だけど、向き合うことに意味があるという考え方も教えたいなと思います。
 例えばうちだと、長男と次男でゲームをしてたとしたら、次男の方がうまいんです。それですぐ「こうやるんだよ!」とコントローラーを取ってしまう。
 僕は「(長男が)やってるんやからやらしたれよ。ルールにのっとってやろうや。家族やけど俺らはチームなんやから、そのチームのメンバーが嫌がることすんな」って言い方をしています。でもね、なんか、説得力ないかなーとは思います。だって僕も人が嫌がることをやるじゃないですか、仕事では。

「なんかヘン…?」を子どもに伝える

 主人公の「みー」が友達にされる「むにむに(他人の体を触ること)」というのが、めっちゃ子どもの頃ってこういうのあるよな、子どもにとってすごく普遍的で分かりやすい例だな、と思いました。「なんかヘン…?」という、人からされて「嫌だ」という気持ちを、「みー」のお父さんが単なる感情だけじゃなく、適切に、理路整然と説明してくれていて、解決方法まで言ってくれているのがいいなと思いました。これを読むと「何がどう嫌なのか」を子どもに説明するときに、伝えやすいと思いました。
 人生は嫌なことだらけじゃないですか。でもこの絵本は、嫌なことをどう回避するかの方法を提示してくれているのがいいですよね。
 その上で、その回避の方法は人それぞれだよ、ということを子どもたちには伝えたいなと思います。

(みなみかわ 芸人)

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