書評・エッセイ

2013年11月号掲載

現代の奇書!?

藤原敬之『カネ遣いという教養』

藤原敬之

対象書籍名:『カネ遣いという教養』
対象著者:藤原敬之
対象書籍ISBN:978-4-10-610539-5

 今年公開された『スター・トレック イントゥ・ダークネス』。映画版『スター・トレック』の最新作でベネディクト・カンバーバッチの好演もあって満足できる内容になっていると思いました。
 私は中学生の時にTVドラマ『宇宙大作戦』に夢中になって以来“トレッキー”と呼ばれるコアなファンの一人です。宇宙船・USSエンタープライズが活躍する一連のシリーズでは1987年から1994年まで続いた『新スター・トレック』が最も好きで、全178話のDVDも揃えていて繰り返し観ています。
『新スター・トレック』の舞台となる二十四世紀にはカネは存在していません。
 その頃の人類は金銭欲や物欲を克服し、自己の精神性を高めることを生きる目的としているという設定になっているのです。
 原作者のジーン・ロッデンベリーは「『スター・トレック』で描くのは道徳である」とまで言い切っています。彼が理想とする未来社会ではカネは忌み嫌うべきものとして切り捨てられています。
 1991年に70歳で亡くなった彼が、本書『カネ遣いという教養』を読んだら何と言っただろうか? それを私は考えてしまいます。
「現代の奇書、ですね!」
 これは本書の原稿を最初に読んだ編集氏の言葉です。
 カネ儲けや投資の本はこの世にごまんとありますが、カネ遣いについて書いた本は確かに聞いたことがありません。その事実をもって、この本が世に出たことは奇妙奇天烈と言ってよいのかもしれません。
 ひとりの男の尋常でないカネ遣いを知ることでカネの本質を知ってもらうことが出来るのではないか? 本気でそう思って書いた節があります。
 どんな投資本やビジネス本よりもカネを巡る真実を書いたという自負があるのです。
 カネを巡る真実? そう書いてハタと思います。 カネをインタフェースに人が出来ること、知ること、喜ぶこと、悲しむこと、考えること……この世で最も不可思議な存在であるカネ(通貨)というものを“遣う”という側面から描いたものを“奇書”と言うのは、正に言い得て妙だ……と。
 そして、「カネ遣い」に「教養」という、本来結びつかないようなものが、本書では不思議と結びついている。読んでそう思って頂けたならこれ以上の幸せはありません。
『新スター・トレック』では宇宙船の中での休憩時に乗員たちがポーカーゲームに興ずる場面が数多く出てきます。そこには賭けるチップ(疑似通貨)が登場しますし、勝った負けたで二十四世紀の人間たちが一喜一憂しています。
 あのチップは何なのでしょうか?
 道徳はいざ知らず“カネを巡る真実”は永遠に変わらない証拠だと私は思っています。

(ふじわら・のりゆき 小説家【ペンネーム・波多野聖】)

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