インタビュー

2015年5月号掲載

『孫物語』刊行記念特集 インタビュー

孫はすべてが宝もの

椎名誠

対象書籍名:『孫物語』
対象著者:椎名誠
対象書籍ISBN:978-4-10-345623-0

――じじバカ(あとがき)のド直球エッセイですね。

椎名 そうですなあ(笑)。孫は下から、小学一年生、三年生、六年生。男女男。息子の岳は最初、アメリカで所帯を持っていたんですが、三人目の子供が生まれるのをきっかけに日本に移住、ぼくのウチの近所に越して来ました。

――本ではいろんなエピソードが書かれています。最後に北海道にある別荘に男の子二人を連れて行きますが、「黄金の夏休み」と表現していましたね。

椎名 庭の原っぱはバッタだらけで、捕虫網持って走り回ってた。あんな経験、東京じゃないですからね。長男の波太郎は帰りの日が近づくとブルーになってましたよ。山あり海ありで子供にはたまらなかったでしょ。

――本には夏までのことを書いていましたが、その後は?

椎名 つい最近(インタビュー時)、春休みになったけども、三人とも忙しいんだ。長男は中学受験するんで塾、長女の小海はクラシックバレエに熱を入れていて、流も公文に通ってる。親は子供の自主性にまかせているんだけど波太郎は勉強が好きらしい。末っ子は正反対で肉体派だけど。

――波太郎君は本好きで、椎名さんの書庫が宝物だと。

椎名 特に、伝記や歴史書、自然科学系の本が好きみたい。ホント物知りだよ。

――次男がわんぱくで、女の子が工作・造形が好きらしいですが、きちんと椎名さんの血を受け継いでますね。

椎名 次男はとんでもないやつで、二歳の時テーブルから落ちて骨折した。初めて海に行った時も、泳げもしないのに海に向かって走って飛び込んで行った。白眼は紙みたいだから何か書いてやろうと、鉛筆を入れようとするんだから(笑)。

――お孫さんとはどのくらい頻繁に会っています?

椎名 週末に一度くらいかな。彼らはウチの鍵を持っているから、自分たちで勝手に上がって来る、三人で「わーっ」って叫びながら。流は、ぼくのいる部屋に入ってくると、決まって入口でピストルをバーンと撃つ。なんだろうね、あれ。うちには使った校正ゲラとか不用な紙が多いから、そこに絵を描いたり、丸めて剣にして、戦いを挑んできたり。

――子供と孫は、どうちがいますか?

椎名 責任感のちがいでしょ。それと孫の場合、こっちもむこうもお互い一番機嫌のいい状況で会っているから、双方でいい時間を過ごすことができる。

――孫と接することによって、ご自身が変わったことは?

椎名 自分の健康に気をつけるようになったね。残りの人生あと何年生きるのかな、などと決してネガティブじゃなく考えるようにもなった。そんな思考、今までなかったからね。

(話の途中で奥様の渡辺一枝さんがお茶を持って来てくれる)

一枝さん 時々、「あいつら今日は来ないのかなあ」って。前日に「明日行く」と電話があって来なかったりすると、ガクッと落ちこんで、そういう日は眠れないようよ。

椎名 そういうことはあんまり言わないように(笑)。

――好々爺ですね。

椎名 孫はすべてが宝ものだと感じます。オレにとっては動くおもちゃですよ。外出先から帰って玄関を開けて、そこに小さい靴が並んでいると、素直にうれしい。急に明るくなったりして(笑)。

 彼らがアメリカにいた時は、半年に一度くらいしか会わなかった。会うたびに成長していて、表情がちがう。本にも書いたけど、帰りは決まって空港まで送って来てくれたんだけど、別れがつらかったね。バイバイ、バイバイって、大きな声で手を振ってくれる。別れた後、気を紛らわせるため、搭乗前にウイスキーをガンガン飲んでた。

――ところで、旧友には孫持ちはいますか?

椎名 弁護士の木村晋介のところは女の子かな。沢野ひとしには、双子の孫がいる。沢野がどういう顔をして、その二人と遊んでいるのか、想像できないんだよ、オレは。

――家族の成長は早いともお書きになっていますが?

椎名 孫もジイちゃんと遊んでくれるのは十歳くらいまでだと思ってる。そのくらいが、父親から自立する頃ですからね。

――下の流君は六歳だからあと四年くらいですね。

椎名 あと四年たったらぼくもだいぶ体力落ちるだろうし。今だって、流は手加減せずにキックしてくるけど鍛えていないと骨折しますよ。

 波太郎の受験が終われば、またみんなで北海道に行こうと思う。それが今から楽しみですね。

 (しいな・まこと 作家)

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