インタビュー

2016年6月号掲載

インタビュー

男の本能から生まれる色気

――『NEW WORLD「新日本プロレスワールド」公式ブック』

篠山紀信

対象書籍名:『NEW WORLD「新日本プロレスワールド」公式ブック』
対象著者:新潮ムック
対象書籍ISBN:978-4-10-790242-9

 先日、新日本プロレスのオカダ・カズチカ選手を撮影しました。「新日本プロレスワールド」の公式ブック『NEW WORLD』の表紙とグラビアを飾ります。

 僕にとってプロレスは、力道山とシャープ兄弟の試合をラジオが中継してた、そんな時代のイメージ。「オカダって知ってる?」って聞くと誰でも知ってて「最高の選手ですよ!」って言うんですよ。女の子にもファンが多くて、それで撮ることにしたの(笑)。

 ムックに載るのは両国国技館の試合を撮ったものですが、最初は後楽園ホールで撮ってみたんです。他のカメラマンはリングサイドで撮ってて、あっちのほうがいいかなと思ったら「危険ですから」って言われて止められちゃった。それでバルコニーから撮ったんだけど、逆にリングがすっごくよく見えるんです。最初は六〇〇ミリのレンズでやってたんだけど、動きが早くて追いきれなかった。それで三〇〇ミリ、二〇〇ミリのレンズに変えていったんです。

 試合中、他のカメラマンは、どのタイミングに何が起こるってことを予測して、起こった出来事を撮ってるんだよね。僕はそうじゃなくて、男としてのオカダさんの魅力だけを追いかけたの。微妙な表情に彼の色気が見えるでしょう。女の子がほれぼれするのがよくわかりますよ。他の選手はそれぞれ役柄を持っていて、リングの中で役割を全うしている感じなんだけど、彼はその役割を超えた清々しさがある。試合にも選手の人柄が出ていて、それが人気につながってるんだなと実感しました。

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                            オカダ・カズチカ選手(左)と篠山氏

 その後「芸術新潮」7月号で男のヌードを撮ることになって、ぜひオカダさんでってお願いした。試合写真もいいけど、パンツ脱いでるのもいいと思うんだ。

 彼はヌードの被写体としても素晴らしい。男のヌードって、カラダが出来てるとマッチョになりすぎるよね。男が、たおやかな感じに見せるっていうのもちょっと違う。見せる肉体と闘う肉体は根本的に違うんだよね。見せる肉体は一見キレイで繊細な動きができるんだけど、オカダさんには男の闘う本能から生まれる色気がある。それは、これまで撮ってきた中でもダントツです。プロレス辞めて、ヌードモデルになっても全然食べていけますよ(笑)。

 顔がチャーミングなんだよね。そしてその顔についてる肉体が、とても品がいい。レスラーだから普通の肉体じゃないんだけど、これ見よがしの「すげえだろう」って感じが全然しない。そこがなんともかわいらしく、愛らしいんです。

 レスラーに向かって「かわいい」なんて言うのは変かもしれないけど、僕の中では「かっこいい」の上、最高の褒め言葉。「かわいい」時に出る色気が男には大事なの。昔から、女の子の一番の褒め言葉は「かわいい」なんだから。

 (しのやま・きしん 写真家)

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