書評

2024年8月号掲載

よく読みましたか?

今道琢也『人生で大損しない文章術』

今道琢也

対象書籍名:『人生で大損しない文章術』
対象著者:今道琢也
対象書籍ISBN:978-4-10-611051-1

 突然ですが、次の問をよく読んで、短い文章を考えてみてください。

問 業務におけるコミュニケーションの重要性について述べてください

 できましたか? 簡単だったでしょうか。
 では、改めて聞きます。問を「よく読んで」文章を考えましたか? 本当に「問の意味」を理解できていますか? わざわざこのようなことを言うのは、問を「よく読まずに」答えを書く人が余りにも多いからです。
 私は10年前にNHKを退職し、インターネット上に小論文指導専門の塾を創業しました。どれだけの需要があるだろうかと、不安を持ちつつの船出でしたが、蓋を開けてみると、高校・大学入試から、就職試験、昇進試験まで、ありとあらゆる相談が寄せられました。「こんなにも多くの人が文章作成で悩んでいるのか」と、驚いたものです。
 そして、もっと驚いたのは、多くの人が問を読まずに解答を書いているという事実です。小論文にせよ、エントリーシートにせよ、「このようなことを書け」という指示があります。多くの人は、それを読まずに解答を書いているのです。
 もちろん、一応問に目は通しているのでしょうから、「読まずに」というのは少し言い過ぎかもしれません。少なくとも、問を「よく読まずに」書いていることは確かです。
 前掲の問いかけであれば、「重要性」の意味を正確に理解できるかどうかが鍵です。この問を見たときに、「重要性を述べる、とはなんぞや」と一度自分に問いかけたでしょうか。ここができたかどうかで答案の評価は大きく変わります。では、どんな文章であれば、問を理解した解答といえるのか。その答えは、本書に記しています。
 人生には、文章の出来不出来によって、その後が大きく左右される場面が何度かあります。例えば、大学入試です。小論文を課す大学がたくさんありますし、総合・学校推薦型選抜では、志望理由書などを書く必要があります。就職試験ではエントリーシートの記入が求められますし、昇進試験で小論文を課す会社は多数あります。このような場面で、的確な文章を書くことができれば、とても有利ですし、そうでなければ大損をします。実際、教員・警察官になりたいけれど、小論文が書けないためにどうしてもなれない、係長に昇進したいけれど、毎回小論文試験で落とされている、そんな人が世の中にはたくさんいるのです。
 本書では、文章作成のポイントをできる限り単純化し、分かりやすくまとめてあります。是非とも本書を読んでいただき、「文章で大損することのない人生」を送ってください。

(いまみち・たくや ウェブ小論文塾代表)

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