田村泰次郎(タムラ・タイジロウ)
(1911-1983)三重県に生まれる。早稲田大学在学中から小説、評論などを次々と発表し、有望な新人と目されていたが、太平洋戦争開始を前に応召。中国各地を転戦し1946年に帰還する。「日本の女には貸しがある」と叫んだ言葉の通り、男女の肉体と欲望を描くことで人間の魂に迫ろうとする作品で戦後文壇に華々しく躍り出た。『肉体の悪魔』を始めとして『肉体の門』『春婦伝』『男鹿』『蝗』『地雷原』など、戦場を潜り抜けた人間だけが持つ独特の生命観に裏打ちされた文字通りの「肉体派作家」として熱狂的に支持される。1967年に脳血栓で倒れる。以後ほとんど執筆をすることがなかった。