書評
2026年4月号掲載
ここにひだまりがある
西原理恵子『ねこいぬ漫画かき 1』
対象書籍名:『ねこいぬ漫画かき 1』
対象著者:西原理恵子
対象書籍ISBN:978-4-10-301941-1
現在、いわゆる「お年頃」のワタクシ。更年期真っ只中を爆走中です。
自律神経も情緒もあったもんじゃない日々を過ごしておりますが、幸いなことに同世代の友人たちみんな同じようなことを口にするので、「わたしだけじゃない」と心強い気持ちでホルモンの荒波を泳いでいます。
だから、というわけではないのですが、西原理恵子さんのこの本はアカン……今のわたしには特にアカンです。涙腺が大暴走する。
普段乾きに乾ききったドライアイなのに……。乾燥肌なのに。わたしの貴重な水分が外へ流れ出てしまう。
わたしにもかつてちいさな家族がいました。ハムスターのハムちゃんと、モルモットのだいふくもち。
ハムちゃんはひまわりの種が大好物で、だいふくもちはサニーレタスが大好物。
小学生だったわたしは、ハムちゃんを飼っているときは、小学校で育てたひまわりから毎日種を数粒ずつもらって帰っては与え、だいふくもちを飼っているときは、学校からの帰り道にある八百屋とスーパーで、サニーレタスの値段を偵察するのが日課でした。
当時、サニーレタスは88円から150円あたりを推移しており、100円を超えると小さなだいふくもちのためには購入してもらえないので、98円のサニーレタスをみつけると、売り切れる前に母に報告するべく、45分の道のりの通学路を急いで走って家に帰ったものです。
四六時中、ハムちゃんとだいふくもちのことを考えていたものですが、彼らは両者共、わたしのことを認識している気配はみられませんでしたし、一瞬でも隙をみつけては、脱走してやろうと目論んでいることだけは伝わってきました。
名前を呼んでも全く振り向かないし、たまに檻からちいさなかわいい鼻をほぐほぐと出すので、なでてみようと指を出せば秒で嚙まれたりして、緊張感しかない関係性でしたが、わたしは彼らが大好きでした。
あれからあっという間に40年ほどたちましたが、『ねこいぬ漫画かき』は、彼らとのなにげない日々も思い出させてくれます。
一方通行ではありましたが、大好きは確かにそこに存在したと。
西原さんが、愛犬ぽんさんを大好きで、ぽんさんも西原さんが大好きで。
「ぽんさんがあまえるとうれしくて」「ねむるとうれしくて」「おかーはんと決めてもらえてうれしくて」
西原さんのことばに、ぽんさんのえがおに、お互いの大好きをたっぷり感じる、そんな一冊です。
いいなと思うのが、ぽんさんのことを大好きだったのは、西原さんだけではなくて、ご家族のみなさんや、愛ちゃん、ご近所さんや仕事先の方々……みんながぽんさんを大好きだったんだよ、って何度も何度も繰り返すように描かれていること。
だから読めば読むほど思うのです。
きっとこの本を一番読んでもらいたかった相手は、ぽんさんだったんじゃないのかなって。
たくさんの積み重ねてきた日々の中で、西原さんたちの愛情は、ぽんさん自身にたっぷり伝わっていると思うのですが、まだまだもっともっと伝えたいたくさんの大好きが西原さんの中にはあふれてるのではないか、ぽんさんたちへ向けたラブレターが、まさにこの本なのではないのかなと感じます。
ここまで読んでくださって、どうしよう、涙で最後まで本書を読めないのではないかとご心配になるかもしれません。
でも大丈夫。
そこは西原さんですので、日々のワンニャンやらかし話もたっぷりです。
涙があふれてくるところで、わんこさんもねこさんも、おばあちゃんも、いい塩梅で涙の蛇口をギュッとしめてくれます。
特にねこさんたちは自由で最高です。いいなあ。ねこに仕事、ジャマされてみたいな。顔、まくらにしてもらいたいな。オレカワイイビームもあびたいよ。
ふふふと笑ったり、ぐふっと噴き出したり。それでも、
「わたしの はじめての いぬ」
「わたしの 金色の いぬ」
このあたたかくてひだまりのようなことばの数々に、わたしの涙腺は何度も負けてしまうのです。
(こんどう・あき キャラクターデザイナー)




