書評
2026年5月号掲載
なぜ大人になると友達ができないのか
古市憲寿『コミュ力不要の社交術』(新潮新書)
対象書籍名:『コミュ力不要の社交術』(新潮新書)
対象著者:古市憲寿
対象書籍ISBN:978-4-10-611121-1
大人になると友達ができない。
そんな悩みを聞くことがある。子どもの頃はクラスメイトをはじめ、たくさん友達がいた。だけど今は同僚や取引先こそいるものの、「友達」と呼べるような存在は少ない──。
実はこれって全く不思議なことではない。学校のクラスというのは、言ってみれば「同い年の人間を数十人、狭い教室に朝から夕方まで、年単位で監禁するシステム」。この閉鎖空間を平穏に生き抜くためには、誰かと徒党を組むのが最も合理的で、楽な生存戦略である。子ども時代の友達作りは、学校側の用意した人間関係カタログから相手を選ぶ「配給制」だったわけだ。
だけど大人の世界は違う。「みんなと仲良くしましょう」と音頭を取る担任教師はいない。仕事と家の往復をしているだけでは、新たな出会いはゼロ。大人の友達作りは、自ら街に出たり、趣味の場に顔を出したりして、気の合いそうな人を見つけて声をかける「自由市場」なのだ。
さてどうすればいいのか。自分で言うのもなんだが、僕は友達が多い方だと思う。誕生日パーティーを開けば100人以上が来てくれるし、ほぼ毎晩のように友達と会っている。メディアでしか僕を知らない人は驚くかも知れない。あんな悪口や嫌味ばかり言っている人間に、なぜ友達が多いのかと。いや、自分でもそう思います。
実際、子どもの頃は決して友達が多いタイプではなかった。クラスメイトが放課後に連れだって遊びに行くのを横目に、いつもさっさと一人で下校するような、典型的な暗い子だった。
そんな人間がなぜ?
性格が変わったわけではない。無理をして「陽キャ」になったわけでもない。
結論から言えば、人付き合いとは自転車に乗るようなものだ。はじめは難しくても、コツさえつかめば誰でもできる。社交とは「技術」だ。いわゆる「コミュ力」なんていらない。「コミュ障」でも全く問題ない。コミュニケーションの基本は「食事を減らせば体重が減る」と同じくらい、シンプルなことばかりだと思う。
その「技術」を一冊にまとめようと思い完成したのがこの本。題して『コミュ力不要の社交術』。自分でもダサいタイトルだと思うが、最も内容を端的に表している。一般に「コミュ力」という言葉から想像されるような、堂々とした自信満々の人間になる必要はない。
AI時代である。ますます人間の仕事は減っていく。そんな時、人間は何をすればいいのか。答えは人付き合い。社交の重要性は高まる一方だろう。時流に合った一冊ではあると思う。それなら高額の情報商材や、トークンの特典にすべきだったのかも知れない。
(ふるいち・のりとし 社会学者、作家)



